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原寸の凄みと大切さを体感(扇垂木のCAD化成功!?)

原寸、つまりは「実物と同じ寸法」のこと。
かつて建築はこの“原寸”によってのみカタチが生み出されてきました。
もちろんCADのない時代ですから、あの法隆寺も東大寺も五重塔も。

そんな先人の知恵の塊である“原寸”を、恥ずかしながら初めて経験させて頂きました。
そもそも現在ではほぼ原寸作業は行いませんから、それこそ貴重な体験なのかも知れませんが。

さて、先日の記事にも記しましたが、御年75歳になる現役の棟梁からご教授頂きました。
まずは元となる「原寸場」の作成から。
当時は原寸用の間があり、その床に直接描いていました。
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基本的に道具はこちらと巻き尺のみ。
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教えを請いながら、作業は進みます。
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僕は大工さんではないので、原寸とは無縁と思われがちですが、とんでもない。
むしろこちら側がしっかり納まりを把握していなくてはならない立場ですから、必須項目なのです。
どんな立派な画(図面)を描こうとも、実現出来なくては意味がないのですから、そこを加味しながら図面化しているのです。
残念なことに、“一部の”設計事務所や工務店にありがちな「納まりは現場任せ」では絶対にダメ!!
きちんと描き手が作り手に指示できるようにする。
それがお互いの立場であり、責任だと思うのです。
職人さんもやはり人ですから、僕らの建築への思いを図面化(原寸レベル)することで初めて、意思の疎通が生まれてくるのではないでしょうか。
平面と立面は当然ですが、指示図のようなちょっとした詳細図ではまるで伝わりませんし、職人さんに対して失礼に値します。
不思議なもので、思いのこもった建築には出来上がりはまったく同じ“カタチ”でも、そうでない建築には決して出せない「空気感」が存在します。
カタチあるもの理屈は存在するのでしょうが、必ずしもそうでない可能性がある建築に携われるのは幸せな事です。

閑話休題

備忘録として写真と原寸を縮図に収めました。
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それを僭越ながらCAD化してみました。
こちらが今回の作業で起こした原寸図なります。
一般の方にはなんの事だかさっぱりかも知れませんが、右が上から見た図。左は横(わかりやすく言えば)から。
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中心から放射状に垂木(屋根下地)が組まれる訳ですから、単に配置すれば済むことでは?と、僕も最初簡単に考えていたのですが...放射状から更に屋根勾配が発生するのですから、しかもバラバラの角度を付けて...
結果的に垂木はこんなカタチの加工が必要となります。
こちらは建て方前に工場で削っておきます。
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頂部を見上げるとこうなります。
なんとも複雑に、しかし規則的に整列します。
寸法の追い出しを間違えるとこの感覚で垂木は並びません。
勾配があるのですから、平面では決して追えない線が存在しています。
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そのおかげでこのように組み上がる...はず!!笑
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さて、先程の「平面では決して追えない線」のヒントがこちらに隠されています。
もちろん本番では真四角に組み上げますが、原寸上で組み上げるとなぜか、しかし必然的に“円形”になるのです。

それはなぜか...この原寸作業を経験することで、先人の知恵と美学を教わりました。
そしてまた、原寸作業をしたものでしか味わえない感動と経験があるものですから、おいそれと簡単に教えることは出来ませんし、本当の意味は伝えられないと思います。

けれどもこのCAD化。
描きながらも「先人への冒涜」という罪悪感に苛まれてしまうのです。
CADはもちろん文明の利器ですから、活用することが悪ではありませんし、僕も存分にその恩恵を授かっています。
だがしかし、先人が何日も、もしかしたら何年も掛けて生み出したこの「扇垂木」という技法をほんの1時間程度でCAD化して、それをネット上で配布する・・・冒涜です。
きちんと意味を理解し、先人に感謝してその恩恵を受ける。
それが礼儀ではないでしょうか。
例えば映画という作品を違法コピー、ネット上で無料ダウンロード・・・同レベルの犯罪な気してならないのです(笑)
出し惜しみではなく、きちんと伝えたいという意思の表れですから。
もし同業者の方で扇垂木に挑戦したいという猛者がいらっしゃいましたらなんなりと。
もちろんメールで済ますのではなく直接にどうぞ。
その前にこちらが現場できちんと納まってからの話ですが...苦笑

ちなみにこのCADでの数値と、原寸で出した数値の狂いは許容範囲である2mm程度でした。
当たり前かと思われるかも知れませんが、そこもまた原寸をした者にしか判らない境地(笑)
もちろん、原寸で出した数値を尊重して現場に挑みます。

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異業種において、僕のもっとも尊敬する“職人さん”からご教示頂いた動画もどうぞ。
僕は鳥肌がとまりませんでした。
こんな事をさらりと言える「職人」の境地に達したいものです。




本日も楽しい出会いがございました事に感謝です。
さて、明日が最終日となります。
お時間ございましたら♪
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